ブラックホールは事象の地平線に囲まれている。その中には、空間があり、その空間には様々な粒子が閉じ込められている。ブラックホールの温度を理解しようとしたら、事象の地平線の内側に閉じ込められている粒子の運動を調べるのが自然である。
ところが、ポルチンスキーのDブレーンでは、「ブラックホールの分子」であることが分かった開いた弦の端点は、事象の地平線の内側ではなく、表面に張りついている。
ブラックホールとは、Ⅱ型の超弦理論のp-ブレーンがp次元方向に拡がったものである。Ⅱ型の超弦理論には、そもそも「閉じた弦」しかない。なのに、ブラックホールの分子は「開いた弦」であるという。
Ⅱ型の超弦理論の閉じた弦は、事象の地平線の外にあるかぎり、遠くから見ている私たちにはその全体が見えるはず。ところが、この弦が事象の地平線を横切ろうとすると、私たちに見えるのは、地平線の外側にある部分だけである。これは、あたかも、端点がDブレーンのように事象の地平線に張りついた「開いた弦」のように見える。これが、開いた弦が事象の地平線の内部でなく、表面に張りついている理由である。
そして、ストロミンジャーやバッファらが考えたように、この事象の地平線に張りついた開いた弦によって、ブラックホールの性質が説明できる。つまり、ブラックホールの分子は、ブラックホールの内部ではなく、表面にある。
重力を伝える重力子は超弦理論においては閉じた弦の振動として現れる。しかし、開いた弦には重力子は含まれていない。つまり事象の地平線に張りついた分子の世界には、重力が働いていない。
ブラックホールの内部の様子は、事象の地平線に張りついた開いた弦を使って理解できる。しかも、開いた弦の中には重力子は含まれていない。この奇妙な事実から、新しい発見が生まれた。
「ブラックホールの内部で起きていることは、その表面を見るだけですべて理解できる。」
という考えである。

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